しるの読書記録

読んだ本をただただ記録する

意思決定の教科書

ハーバード・ビジネス・レビュー意思決定論文ベスト10 意思決定の教科書

ハーバード・ビジネス・レビュー意思決定論文ベスト10 意思決定の教科書

  • 発売日: 2019/03/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

ハーバード・ビジネス・レビューの中で「意思決定」に関する論文のベスト10を集めた本。 4章の「対話が組織の実行力を高める」が一番おもしろかった。

目次

  1. 意思決定をゆがめる心理的な落とし穴
  2. 意思決定の行動経済学
  3. ニアミス:隠れた災いの種
  4. 対話が組織の実行力を高める
  5. プロセス重視の意思決定マネジメント
  6. 意思決定のRAPIDモデル
  7. 道徳家ほどおのれの偏見に気づかない
  8. 意思決定プロセスのカイゼン
  9. 脳科学が解明する意思決定リスク
  10. 戦略立案と意思決定の断絶

論文

意思決定をゆがめる心理的な落とし穴

心理的な落とし穴といて「アンカリング」「現状維持バイアス」「サンクコスト」「確証バイアス」「フレーミング」「見積もりと予測(自信過剰・安全第一主義・偏った記憶)」について、実験内容と対処法についてまとめられている。

どれも、そういう落とし穴がある、と理解し意識していれば、防げることも多いので気をつけたい。

意思決定の行動経済学

同じく、意思決定にはバイアスがかかるとした上で、意思決定者が提案を受ける際に、バイアスがかかっていないかを確認するためのチェックリストについて書かれている。 自分のバイアスには極力気をつけるようにはしていたが、提案者がどうかという点はあまり考えられていなかったので気をつけたい

  • 提案者は私利私欲にかられていないか?
  • 提案に惚れ込んでないか?
  • 反対意見はでていたか?

ニアミス:隠れた災いの種

ヒヤリハットの話。成功体験を積むとリスクをはらんでいることを忘れてしまうというのは気をつけたい。

対話が組織の実行力を高める

対話の中身とスタイルが、従業員の行動や信念(組織風土)を形成するとして、意思決定のある組織がどのような組織運営メカニズム(対話)をもっているかについて書かれている。

  • オープンで
    • 対話の結論を決めつけず、代案・発見を真摯な気持ちで探る
  • 忌憚なく
    • 進んで口にしにくいことを発言し、対立意見があることを伝える
  • 形式にこだわらない
  • 会議の流れで反対意見を封じない
  • アクションプランが作成される
    • 自分が何を実施すべきかを正確に知る

対話を殺すもの

  • 宙に浮いた対話
    • それぞれが勝手に会議の内容を咀嚼し、誰も責任をとらない → アクションプランをまとめる
  • 情報の流れの停滞
    • あとから重要な事実や意見が出てきてやり直しになる → 適切なメンバーを参加させ、オープンで忌憚のない対話をする
  • ばらばらな視点
    • 自己の利益にこだわる → あらゆる立場から意見を出し、全体感をもって話す
  • 誰もが勝手放題
    • ゆすり、脱線、無発言等ネガティブな行動がはびこる → リーダーはネガティブな参加者にペナルティを与える

プロセス重視の意思決定マネジメント

意思決定には主張型と探究型のアプローチがあるとし、探究型の意思決定の場は、意見の相違を抑制せず、さまざまな選択肢を慎重に検証し合意することが大事で、そのためには3つのCが不可欠。

3つのC

  • 建設的対立 - Conflict
    • 情緒的対立を避け、認識的対立を促す
  • 意見の考慮 - Consideration
    • 全ての意見に耳を傾け理解する、ただし、全ての立場が通るわけではない
  • 議論の適切な時点での終了 - Closure
    • 多少の曖昧もよしとし、リーダーが終了を宣言する

良好な意思決定の場の特徴

  • 代替案が豊富にある
  • 前提事項が検証されている
  • 基準の定義が確立している
  • 反対意見が出され、議論がそれに続く
  • 公平さが認知されている

意思決定のRAPIDモデル

意思決定のボトルネックを解消するための、提案R、同意A、実行P、助言I、意思決定Dのステップの役割について書いている。 この役割分類は使えそう。

  • 意思決定の優先順位をはっきりさせる
  • 行動こそ目標(コンセンサスが目標ではなく、当事者意識をもって取り組む)
  • 曖昧さを排す(責任の所在を明らかにする)
  • スピードと適応力が欠かせない
  • 意思決定は肩書に優先する
  • 風通しのよい組織は役割を強める
  • 論より行動

道徳家ほどおのれの偏見に気づかない

偏見がないと思っても偏見はあるので、それを心理学的なアプローチで誤謬を正そう 、という話。

意思決定プロセスのカイゼン

意思決定のミスを防ぐ4つのステップ(特定、棚卸し、介入、制度化)について、手法もあわせて紹介している。

脳科学が解明する意思決定リスク

意思決定を誤らせる前兆「レッドフラッグ」の見極め方について。

戦略立案と意思決定の断絶

戦略と意思決定がバラバラなので、不合理な事業活動になってしまうので、乖離をいかにして埋めるかの実例について紹介されている。