しるの読書記録

読んだ本をただただ記録する

社長の覚悟 守るべきは社員の自尊心

自発的に動く社員を育てる7つの法則について、自身の経験を元に書いている。 動けば動くほど部下の心が離れていく状況から180度転換して、「You work for me」から「I work for you=いかにヒトと組織を育てるか」に変わる方法として、一貫して「社長は動きすぎるな」ということが書かれている。

  • 社員を動かそうと思ってはいけない
    • 社長が見ているものと社員が見ている物は違う
    • 動きたくなる環境作りをする
    • 部下がワークしないのは社長の責任
  • 「社員のために」がヤル気を生む
    • 社長自身が退路を断ち、求められた役割を演じる
    • 悪い情報こそ社員に伝える
    • 社員をよく見てモチベーションに水をささない
  • 伝えたいときこそ、聞く
    • 聞く場を定例化し、複数持つ
    • 等しく聞く(相性の良くないヒトほど聞く場を)
    • 組織の問題は、聞いて即行動しない
  • 悪い報告こそ歓迎する
    • 報告した人に感謝する
    • 裸の王様にならない
    • 自分の身を守ったり正当化するのではなく、社員のために
  • できない社員には、できるための支援を
    • 支援なく仕事を任せたらできないのは当たり前
    • 特定スキルだけでなくポータブルスキルを高める
    • 素養を見極めできる仕事を探す
  • 何かをはじめたら、何かをやめる
    • 集団皿回し(自転車操業)になっていないか
    • 今日と明日のバランスを考える(今うまくいっていても、その先があるか)
    • 部下の「やめる」を評価する
  • 異動や抜擢で「いまに甘んじない組織」に
    • 「安定した成長力」より「変化への対応力」
    • ルールは守るものではなく、つくるもの
    • 自分を叱ってくれる人を見つける

たった一人の熱狂 -仕事と人生に効く51の言葉-

SNS「755」での著者の発言を元に書籍化したもの。 タイトルどおり、「結果が出ない努力に意味はない」「ひと休みなんかするな」など熱い言葉が多いので、合う合わないはありそう。

ファシリテーションの教科書 - 組織を活性化させるコミュニケーションとリーダーシップ

チームの読書会のテーマ「ファシリテーション」の回で読んだ。 この本ではリーダーが持つべきスキルとしてファシリテーションをあげているが、リーダー関係なく読んでも良い内容。 大きく「仕込み」と「さばき」に分けて体系的にまとめている。

問題解決の思考ステップ

  • What - 問題意識の明確化
    • 問題とは理想と現実のギャップ
  • Where - 問題箇所の特定
    • 事象を分解して共通点・相違点に着目する
  • Why - 真因の追求
    • 因果関係(相関関係、時間的前後関係、第三因子の不存在)を見つける
  • How - 対策の立案・実行
    • 実行プラン、アウトプットイメージ、責任者を明確にする

仕込み

  • 仕込みは誘導のためでなく、臨機応変に対応するため
  • 議論の出発点と到達点を明確にする
  • 参加者の「認識レベル」「意見・態度」「思考・行動の特性」を把握する
  • 論点を広く洗い出し、絞り込み、深める
    • 論点とは「意見が答えになるような問い」のこと
  • 議論すべき論点、議論すべきでない論点、確認する論点、置いておく論点に分ける

さばき

  • 発言しやすい雰囲気や刺激を与える
  • 発言を受け止めて、何が「意見=主張・結論」なのかを理解し、周りに理解させる
  • 相手の論理を完成させる(不明確な主張、論点の欠落・飛躍、前提の省略)
  • 議論すべき論点を強化し議論すべきでない論点を止める
  • 意見の対立に対処する
    • 情報格差をなくす
    • オプションを洗い出しメリット・デメリットを考える
    • 判断基準・優先順位を揃える

マネーという名の犬 12歳からの「お金」入門

子ども向けのお金やビジネスの入門書。前半は「成功日記を書く」など自己啓発本かなと思ったけど後半はお金との付き合い方の話だった。 金のガチョウを例に、「今使うため10%」「短期的な夢のため40%」「ガチョウ=投資のため50%」に分けるやり方は分かりやすくて良さそう。

  • お金は一番大切ではないが、大変なときにはとても大切
  • 誰かの問題を解決すると、人はお金を払う
    • 自分が喜んでやりたいこと、で、他人が抱える問題を解決する
  • 決めたことは72時間以内にやる
  • 仕事は不愉快で辛いものという思い込みを捨てよう
  • 幸運というものは、準備と努力に結果に過ぎない
  • 成功しても、うぬぼれて学ぶことをやめてはいけない

作者あとがきに書かれていることが良かった。

わたしたちはすぐ「そんなことはもう知っているよ」と決めつけてしまいがちです。
こうした姿勢こそ、落とし穴にはまるもとです。
「もう知っている」と思った瞬間に、学ばなくなってしまうからです。
そこにある本当のメッセージに耳を傾けようとしなくなるのです。
また、新しいことを学ぶだけでなく、「学んだことを実際に実行する」ということも大事なのです。

数学的コミュニケーション入門 「なるほど」と言わせる数字・論理・話し方

数字を使った論理的なビジネスコミュニケーションの方法について書かれた本。 エクセルの使い方とかはいらなかったかなと思いつつ入門書なので…。移動平均相関係数、回帰分析などを知らない人なら勉強になるかも。

  • 「正確な計算」よりも「素早くざっくり概算」
    • 日々の暮らしの中で数字で見積もるという練習をしてみる
  • なにかを明確に定義しないと、思考は始まらない
  • なにかと比べるから、数字はつくれる
  • グラフのはメッセージを込め、余計な情報はカットする
  • 「資料が雑」=「重要な仕事も雑」
  • プレゼンでは冒頭に「定義」と「ゴール」を示す
  • 「結論から」タイプと「前提から」タイプがいることに気をつける

わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か

学校教育や劇作家の立場から、コミュニケーション能力について考える本。 マナーが人格を示さないように、コミュニケーション能力も人格ではなく文化や知識・経験の違い。

コミュニケーション教育、異文化理解能力が大事だと世間では言うが、それは別に、日本人が西洋人のように喋れるようになれということではない。
欧米のコミュニケーションが、取り立てて優れているわけでもない。
だが、多数派は向こうだ。多数派の理屈を学んでおいて損はない。
  • 表現するという「異文化理解能力」と同調するという「同調圧力」のダブル・バインド(2つの矛盾したコマンド)
  • 少子化でずっと同じクラス
    • 人は伝えなくても伝わると省略する
  • 演劇の芝居臭さは西洋近代演劇を模倣しているから
    • 英語はアクセント、日本語は語順や繰り返しで強調
    • 「ロシア人は本当にチェーホフの台詞みたいに喋る」
  • 協調性から社交性へ
心からわかりあえることを前提とし、最終目標としてコミュニケーションというものを考えるのか、
「いやいや人間はわかりあえない。でもわかりあえない人間同士が、どうにかして共有できる部分を見つけて、それを広げていくことならできるかもしれない」と考えるのか。

対話と会話

  • 日本はムラ社会を基本として構成され、会話はあったが対話がなかった
    • 会話:価値観や生活習慣なども近い親しいもの同士のおしゃべり
    • 対話:あまり親しくない人同士の価値観や情報の交換。あるいは親しい人同士でも価値観が違うときに起こるそのすりあわせなど
  • ハイコンテクストな社会は少数派(良い悪いではない)
    • 西洋と比べ、「対話」のための語彙が少ない
  • 対話的な精神:異なる価値観を持った人と出会うことで、自分の意見が変わっていくことを潔しとする態度
    • 分かってもらう、説明する、(例えどちらかの意見に落ち着いたとしても)話し合い結論を出す
    • 対話の基礎体力が必要

冗長率

  • ひとつの段落、文章に意味伝達以外の無駄な言葉が含まれているか
  • 対話が一番冗長率が高い(腹の探りあいや枕詞)
  • 冗長率を時と場合によって使い分けるのがコミュニケーション能力

コンテクストの「ずれ」

  • コンテキストの「ずれ」は気づきにくい
    • 「砂漠」で何をイメージするか
    • サモワール」で何をイメージするか
  • 「長距離列車で隣の人に話しかける」という演技
    • 日本人は1割しか話しかけない → そういうキャラ、もしくは何らかの強い理由
    • アイルランド人は「話しかけないと失礼だ」
    • イギリスの貴族は「紹介されるまで他人と話すな」 → 高等教育を受けていないか、あえて貴族らしくなく振る舞っている
    • 韓国は相手の年齢により話し方が変わる → 話しかけづらい
      • ちなみに日本の女性旅行客のクレーム「韓国旅行でいきなり年齢を聞かれた!」
この「簡単に煮えるけれどコンテクストの外側にある言葉」のことを、私はコンテクストの「ずれ」と呼んでいる。
そして、まったく文化的な背景が異なるコンテクストの「違い」より、その差異が見えにくいコンテクストの「ズレ」のほうが、コミュニケーション不全の原因になりやすい。
私たちは、この「ずれ」を容易に見つけることができないから。
これからの時代に必要なリーダーシップは、弱者のコンテクストを理解する能力だろうと考えている。
社会的弱者は、何らかの理由で、理路整然と気持ちを伝えることができないケースが多い。
いや、理路整然と伝えられる立場にあるなら、その人は、たいていの場合、もはや社会的弱者ではない。
社会的弱者と言語的弱者は、ほぼ等しい。
私は、自分が担当する学生たちには、論理的に喋る能力を身につけるよりも、論理的にしゃべれない立場の人びとの気持ちを汲み取れる人間になってもらいたいと願っている。